澄んだ冬空には満天の星が広がり
北斗七星に照らされた二人は
小さな公園の小さなベンチに座っていた。
ブランコと砂場しかない
小さな小さな公園。
昼間遊んだ子供が忘れて行ったのだろう。
砂場には 泥で顔を汚した青いスコップが
冬風にさらされていた。
ベンチに座っている一人の少女が 体を震わせている。
きっと 冬風だけのせいではないだろう。
夜空の星が 少女の瞳から溢れるモノを 輝かせていた。
茶褐色のブレザーに
ベージュのコートを纏ったその体が
グッと強張る。
そんな少女に全くの距離を開けずに
一人の少年が座っていた。
真っ黒のダッフルの中には
同じく茶褐色のブレザーを着込み
首元には 黒と白で編まれたマフラー。
両膝の上に両肘を立て
口元で掌を合わせたまま
氷の様に固まっている。
彼もまた
少女のソレと同じく
冬風だけのせいではないだろう。
しかし。
彼の体を纏った氷が溶けるのには
そう時間はかからなかった。
一瞬冬風が強く吹いた。
ソレに誘われたかのように
少女の瞳から零れ落ちた一粒の滴。
それに気付いた彼は体を半回転させ
少女の足を体で覆うように正面に屈み込み
少女の膝に置いてある朱色に染まった指先と共に
その小さな手を握り締めた。
『大丈夫。この先どうなっても絶対に後悔させへんから。』
"今更何が後悔させないだよ…"
自分の言葉に呆れつつも
ソノ言葉に偽りの気持ちなど無かった。
その言葉から少し間を置き
彼の手から両手を抜き取り少女は
その手で自分のお腹をさすった。
数秒の沈黙の後 少女の口元が緩む。
『・・・。
何か・・・。
何で・・・。
何でそんな簡単に言うん。』
もう止んだはずの冬風にすら遮られそうな
それほどまでに静かな声。
普段なら風の音に遮られ
聞き逃していたかもしれない。
それでも今の彼には
そんな静かな声が胸の奥をえぐる程に響いた。
『な・・・。
簡単に言うた様に見える?
ホンマにそんな事思ってる?
俺がお前と同じ様に苦しんで
お前と同じ様に悩んでると思ってないん?
一人だけ辛いと思ってる?』
言い終わった後
自分の口調の強さに気付き 我に返る。
『二人の事やろ・・・。
俺とお前のことやん・・・。
二人で苦しんでるんやろ・・・。』
少女のお腹をさすっていた小さな手は
その動きを止め 少女の顔を覆った。
『ごめん・・・。
ごめん・・・。
ごめん・・・。』
彼は立ち上がり
少女の小さな躰を包み込んだ。
少女のすすり泣く声を
一片の欠片も漏らさぬように。
冬空を仰いだ彼の目には
遥か北の空で輝く北斗七星が滲んで見えた。
数日後。
彼と少女は
一つの大きな犠牲と共に
小さな小さな成長を遂げた。
真冬の満天の星空に見守られた
小さな小さな公園での出来事。
*wen様*
3丁目の日記屋さん 常連第26号
になって頂きました。
ありがとう御座います(*--)*__)ペコリ
―今日イチ―
「愛してる」の響きだけで
強くなれる気がしたよ
いつかまたこの場所で
君とめぐり会いたい
スピッツ
~チェリー~
北斗七星に照らされた二人は
小さな公園の小さなベンチに座っていた。
ブランコと砂場しかない
小さな小さな公園。
昼間遊んだ子供が忘れて行ったのだろう。
砂場には 泥で顔を汚した青いスコップが
冬風にさらされていた。
ベンチに座っている一人の少女が 体を震わせている。
きっと 冬風だけのせいではないだろう。
夜空の星が 少女の瞳から溢れるモノを 輝かせていた。
茶褐色のブレザーに
ベージュのコートを纏ったその体が
グッと強張る。
そんな少女に全くの距離を開けずに
一人の少年が座っていた。
真っ黒のダッフルの中には
同じく茶褐色のブレザーを着込み
首元には 黒と白で編まれたマフラー。
両膝の上に両肘を立て
口元で掌を合わせたまま
氷の様に固まっている。
彼もまた
少女のソレと同じく
冬風だけのせいではないだろう。
しかし。
彼の体を纏った氷が溶けるのには
そう時間はかからなかった。
一瞬冬風が強く吹いた。
ソレに誘われたかのように
少女の瞳から零れ落ちた一粒の滴。
それに気付いた彼は体を半回転させ
少女の足を体で覆うように正面に屈み込み
少女の膝に置いてある朱色に染まった指先と共に
その小さな手を握り締めた。
『大丈夫。この先どうなっても絶対に後悔させへんから。』
"今更何が後悔させないだよ…"
自分の言葉に呆れつつも
ソノ言葉に偽りの気持ちなど無かった。
その言葉から少し間を置き
彼の手から両手を抜き取り少女は
その手で自分のお腹をさすった。
数秒の沈黙の後 少女の口元が緩む。
『・・・。
何か・・・。
何で・・・。
何でそんな簡単に言うん。』
もう止んだはずの冬風にすら遮られそうな
それほどまでに静かな声。
普段なら風の音に遮られ
聞き逃していたかもしれない。
それでも今の彼には
そんな静かな声が胸の奥をえぐる程に響いた。
『な・・・。
簡単に言うた様に見える?
ホンマにそんな事思ってる?
俺がお前と同じ様に苦しんで
お前と同じ様に悩んでると思ってないん?
一人だけ辛いと思ってる?』
言い終わった後
自分の口調の強さに気付き 我に返る。
『二人の事やろ・・・。
俺とお前のことやん・・・。
二人で苦しんでるんやろ・・・。』
少女のお腹をさすっていた小さな手は
その動きを止め 少女の顔を覆った。
『ごめん・・・。
ごめん・・・。
ごめん・・・。』
彼は立ち上がり
少女の小さな躰を包み込んだ。
少女のすすり泣く声を
一片の欠片も漏らさぬように。
冬空を仰いだ彼の目には
遥か北の空で輝く北斗七星が滲んで見えた。
数日後。
彼と少女は
一つの大きな犠牲と共に
小さな小さな成長を遂げた。
真冬の満天の星空に見守られた
小さな小さな公園での出来事。
*wen様*
3丁目の日記屋さん 常連第26号
になって頂きました。
ありがとう御座います(*--)*__)ペコリ
―今日イチ―
「愛してる」の響きだけで
強くなれる気がしたよ
いつかまたこの場所で
君とめぐり会いたい
スピッツ
~チェリー~
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