11/21(金)AM6:00
携帯、強制停止。
 
多分、口座の残高が足りなかったんだろうな。
25日まで休みないし、給料取りに行くついでに振り込んどこう。
それまでは、時計代わりだな。
  
何てこたぁない。
さきんこと連絡しない今、
携帯何て無くてもイイ。
 
 
 
 
 
11/22(土)AM1:39
一通のメール。
 
『携帯解約したから宜しくね。
 多分、DoCoMoにする。』
  
 
さきんこから。。。
番号は弟の携帯だった。 
 
 
 
 
 
コレは少し前の、さきんことオリの会話。
 
さ『もしかしたら携帯、ドコモにするかも。』
オ『えぇ〜!何でさ!さきんこがドコモにするなら俺もドコモにする。』
さ『ははは。まだ分かんないけどね。』 
 
 
 
こんな事言ってたけど、もうイイ。
オリはさきんこを忘れるんだ。
オリはさきんこの居ない生活を送るって決めたんだ。
 
 
 
 
 
忘れるんだ…。
 
 
 
 
 
 
さきんこからメールを受け取ってから数十分。
別に何をするワケでもなく、
ただただタバコを吹かすだけ。 
 
 
 
 
 
忘れるんだ…。
 
 
 
 
 
・・・。
 
 
 
 
・・・・・・。
  
 
 
 
 
 
忘れようとしてるのに・・・
 
 
 
 
  
 
さきんこのたった一通のメールで、
そんな決意がいとも簡単に崩れようとしている。
 
頭の中では、
一番近くの公衆電話の場所を探してる。
 
"ここからならコンビニの前かな。。。" 
 
そんな自分に気付いて、
そんな自分に苛立ちを覚えた。 
 
 
 
気付いたら左手には財布。 
  
 
 
 
 
タバコの煙を深く吸い込んで、
息を止めてみた。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

          さきんこの声が聴きたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
コンビニでコーヒーを買って、
小銭作ってから公衆電話に。
 
 
あのメールから20分は経ってる。
寝てるかな。
時間も午前2時前。
普通なら電話なんてする時間じゃない。
 
それでも、さきんこの声が聴きたい。
 
 
有りっ丈の小銭を電話の前にばら撒けて、
ゆっくりと受話器に手をかける。 
 
ボタンを押す指がヤケに震えてる。
冷たい風のせいだけなのだろうか。
 
 
 
 
 
…。
 
・・・・・・。
 
 
 
聞こえてくるのは電話のコール音だけ。
 
寝たかな。
公衆電話だからかな。
 
 
軽くため息をついた後、
ゆっくりと受話器を置いて、マンションに足を向ける。
 
たった20メートル程の道が、やけに長く感じた。
缶コーヒーの温もりが、やけに冷たく感じた。
 
 
 
 
 
AM2:07
帰宅。
 
部屋に戻って"時計"と財布をベッドに放り投げて、
トイレでタバコを吹かす。
 
 
 
何やってんだ。
何を期待してたんだ。
 
 
 
 
 
今更ながら、自分の中途半端さに呆れ返った。
 
 
そのまま15分くらい何も考えず、トイレでタバコを吸い続けた。
 
 
 
 
11/22 2:12 
部屋に戻って"時計"を見る。
 
―メール着信一件―
 
?!
 
 
『間違ってたらゴメン!
 いま公衆から電話した?』 
 
 
メールの送信者は言わずともかな、さきんこ。
 
いま思えば着メロが聞こえなかったけど、
この時はそんな事考える余裕もなかった。
 
思わず舌打ちが飛んだ。
自分への叱咤か、或いは戒めか。
 
 
 
 
 
今度こそ…。
30分前と同じ行動をとる。
 
前と違うのは、ボタンを押す指が震えていない。
もうすぐさきんこの声が聞こえる。
何の不安もためらいも無く、電話のコール音に耳を傾ける。
 
 
さ『もしもし』
オ『もしもし?!さきんこ?オレ。』
 
心持ち早口になっている自分に気付く。
  
さ『あー。やっぱりめありぃ?』
 
 
  
久しぶりにさきんこの声を聴いた。
妙に懐かしさが込み上げてきた。
 
 
 
携帯が止まってる事"だけ"を伝えた。
 
 
何となく話が途切れそうな感じ。
いつもなら"じゃあ"って切っているはず。
けど、今日は違った。
切りたくない。
会話何て無くてもイイ。
無言のままでもイイ。
今、さきんことオリを繋ぐ、唯一のモノを失いたくなかった。
 
オ『今何してる?良かったらもうすこし電話しててイイ?』
 
初めて。
初めて自分の気持ちを素直に伝えた気がした。
今までは、さきんこに対して遠慮がちで、
オリの言うことで、さきんこが迷惑しないかな。
いつもそんな事ばかり考えてた。
 
 
 
 
さきんこの優しくて穏やかな声が、受話器から聞こえた。
  
さ『うん。イイよ。』
 
 
 
 
* * * 
 
 
 
とりあえず、12/1にさきんことデートの約束が出来た。
後は確定じゃないけど、
さきんこがエキスポランド誘ってくれた。
と、言っても友達と皆で。
 
 
 
 
やっぱり、オリにはさきんこが必要なんだ。
さきんこのない生活なんて在りえない。
 
後先の事なんて考えても仕方が無い。
例え報われずとも、これからもさきんこを想い続けるんさ。
 
 
 
 
 
 
―今日イチ―
ALONE 恋に落ちてゆけばひとり
光にさらして この心焦がそう
You’re gone いつまでも 歌い続ける声は
どこまで届くだろう 今 君に逢いたい
 
B’z
~ALONE~

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