時はさかのぼり、高校1年の春。
 
一人の女性と出会う。
否、女性と言うには余りにも幼く、
少女と言った方がイイかもしれない。
 
小学生程度の身長と、メガネから覗くクリクリの大きな瞳が印象的だった。
 
 
その少女こそが、
後に『私のこの一生涯で唯一愛した女性』となる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
彼女の名前はカナエ。
 
 
桜の花びらが舞う、4月。
彼女と私は、同じ校門の下で出会う。
お互いにそれなりの感情を抱いてはいたものの、
それを表に出さず、友人としての関係を続けてきた。
 
 
 
 
翌年、高校1年の2月。
二人の関係は急展開を迎える。

2月と言えば…
そう、バレンタインディ。
恋する乙女が勇気を出して意中の人物へ想いを伝える事が出来る日。
 
 
その日を境に、二人の新しい関係が始まる。
 
 
 
 
 
 
何て事はない。
平凡な高校生の恋愛。
 
休み時間に話しをして、
放課後は当たり前の様に一緒に帰る。
下らない喧嘩をし、話会い、
お互いの信頼を深くしていった。
 
それで十分だった。
そんな当たり前の幸せが永遠に続くのだと信じていた。
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
そんな二人に、過酷な試練が待ち受けていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
17歳、高校2年、冬。
妊娠。
 
誰のせいでもない。
二人の責任。
お互いの両親に伝える。
 
二人で抱き合い、涙した。
止め処なく流れる涙。
 
お互いに話し合い出した結論。
 
 
 

 
 
 
子供が子供を生んではならない。
自分の子供を、自分の意思で殺す罪悪感が、胸に突き刺さる。
 
 
 
 
 
 
 
二度と同じ過ちを繰り返さない事を誓い、
大きな犠牲の下に二人は一つ成長した。
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 

 
18歳、高校3年、冬。
高校卒業。
 
私は神戸の福祉専門学校へ。
カナエは京都の教育大学へ。
 
お互いの夢を追い、お互いの愛を信じ、
離れた生活を送ることとなった。
 
 
 
お互い、新しい生活に慣れるのに精一杯で、
ロクに連絡がとれない日々が続く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
18歳、春。
神戸にて、約2ヶ月ぶりの再会を果たす。
 
 
その時…再会を喜んでいたのは、一人だけ。
 
 
 
 
 
 
 
 
その日の夜。
久々の再会で、お互いの愛の確認を始めようとした瞬間。
 
話があるの…
 
 
 
 
 
 
 
 

  
大学の先輩の事が好きになった。
でも貴方の事も好き。
どちらが好きか何て分からない。
彼は、寂しさを紛らわせてるだけなのかも知れない。
けど…一緒に居て楽しい。
 
 
 
 
 
 
 
 
まさかの言葉。
再会を心から喜んでいたのは、私だけ。
 
その日一日、きっとカナエはいつ話をしようか悩んでいたはず…。
そんな事にも気づかず、一人浮かれていた私…。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
一度、距離を置こう。
それでも俺でないといけない、と、
そう思えたらな連絡して欲しい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その日、愛の確認をする事なく、同じベッドで寝る二人。
隣ですすり泣く声が聞こえる。
 
今思えば…
とめて欲しかったのかも知れない。
"お前には俺しかいない"
そんな言葉を待っていたのかも知れない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
翌日、カナエを京都まで送り、ホームでのキス。
 
これが二人の最後のくちづけとなった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2003/6/29 11:32
一通のメール。
 
『こんにちわ。
 元気にしてますか?
 内定貰いました。
 貴方の通ってた専門学校です。
 今から三宮校にお邪魔します。
 本当にありがとう。
 カナエ』
 
 
 
 
 
 
 
―今日イチ―
あぁ僕は君を本当に卒業できるのか
寂しさと切なさと懐かしさがかけ巡る
言葉と心が反比例してしまう 本当に僕は
あなたを忘れて生きる自信がないのさ だけど

さよなら さよなら さよなら
君にもう会いたくはないよ
君と会えば僕は多分
一生忘れられないから
 
ガガガSP
~卒業~

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